コラム

増える外国人観光客に対する日本の観光のありかた

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はじめに

2003年には520万人ほどだった外国人観光客が2017年には2400万人を超えるまでに増加している(注1)。そんな中、インバウンドの需要に対応した観光サービスが求められている。具体的には観光MBA、観光DMOといったものへの取り組みが進みつつあるが、そもそも観光MBA、観光DMOとは何なのか、そしてその必要性についてこのコラムでは述べていく。

観光MBAとは

観光MBAという言葉を聞いたことがあるだろうか。MBAはご存知の通り、Master of Business Administrationの略で、経営学修士のことだ。観光MBAとは文字通りMBAの観光版ということになる。

宿泊施設のうち外国人観光客がよく宿泊する旅館は39489施設も存在する(注2)。そうした旅館では親から代々受け継いだ手法で経営を行っていることも少なくない。しかし外国人観光客が急激に増加している今、インバウンドを意識した手法へ切り替えていかなければならない。観光学科は以前からあるが、それは宿泊施設の経営に焦点を当てておらず、あくまで社会学的に観光そのものについて学ぶところだ。そこで注目されているのが観光MBAなのである。

観光MBAに対する取り組みの現状

京都大学経営管理大学院では「観光庁の2016年度『観光ビジョン実現プログラム2016』における「産業界ニーズを踏まえた観光経営人材の育成・強化」項目にのっとり、観光分野でのトップレベルを担う経営人材の育成を行うMBA教育機関としての大学院にふさわしい教育プログラムの受託開発を行」(注3)っている。そしてその後、「2017年中に文部科学省からの認可を得て、2018年には各10名程度が入学、2020年に一期生が修了する予定だ。」(注4)

観光DMOとは

ここまで各宿泊施設における経営手法の向上に対する取り組みについて述べてきたが、観光は地域ぐるみで稼げる仕組み作りをしていかなければならない。その観光事業戦略を練る組織が観光DMO(Destination Management Organization)だ。観光庁がDMOの登録制度を2015年11月にスタートさせ、現在「広域連携DMO7件、地域連携DMO69件、地域DMO81件の計157件」(注5)が登録されている。

日本において観光DMOが取り組むべきこと

日本版DMOの役割は観光庁のサイトに図解されている通り、データに基づいて戦略を立て、地域の観光関係者とさらに戦略を調整し、実行していくことだ。

観光事業を発展させていくためにマネージメントすべき対象は、VICEモデルを用いると、Visitor, Investor, Community, Environment and Cultureの4つだ。この4つを満足するような観光戦略を立てていくことが重要なのである。

(図1)

終わりに

2020年に東京オリンピックが開かれるため、更なる外国人観光客の増加が見込まれ、彼らが東京以外の観光地にも足を運ぶことが期待されている。そんな状況において、DMOが外国人にとっても魅力的な観光地を形成すること、観光MBAが多くの観光客に対応できるよう効率性を上げていくということの必要性が高まっている。インバウンドを意識した観光業への変革が急務となっているのである。

 

参考

注1 日本政府観光局 ビジット・ジャパン事業開始以降の訪日客数の推移(2003年~2016年)(https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/marketingdata_tourists_after_vj.pdf)

注2 厚生労働省 平成28年度衛生行政報告例 3.生活衛生関係(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/16/dl/kekka3.pdf)

注3 京都大学経営管理大学院 観光MBA(https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/ja/research/organizations-7/kanko-mba-3.html)

注4 事業構想 観光庁、宿泊業の「経営者」育成を本格化 新カリキュラムを確立(https://www.projectdesign.jp/201706/local-innovator/003676.php)

注5 国土交通省観光庁 日本版DMO候補法人の登録一覧(http://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000054.html)

図1 国土交通省観光庁 日本版DMOとは?(http://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.html)

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