コラム

聖地巡礼と地域活性化

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今やアニメは日本だけでなく世界的にみても巨大な経済効果を持っていることは、ニュースなどでも聞くことはあるだろう。昔はマニアックでコアなアニメファンの間でしか盛り上がっていなかった聖地巡礼という行為も最早定着してきている。この聖地巡礼とは、アニメのモデルとなった場所やアニメ制作時に何かしらの関係があった場所のことである。そのアニメのファンが聖地を巡礼することによって、その地域にお金を落としていくことで、時には数十億という途方も無いレベルで経済効果を生むこともある。このような地域自治体とアニメというコンビから生まれる地域活性は現在進行形で広がっている。otaku

聖地巡礼というものは数年前から話題となっている。いわゆるオタク層に爆発的に人気となったきっかけとなったアニメがある。それが2007年にアニメ化された「らき☆すた」というアニメである。このアニメのモデルとなった埼玉県にある鷲宮神社にファンがこぞって巡礼しに来たのだ。埼玉県久喜市はこのアニメの放送後の3年間でなんと22億円もの経済効果があったと発表した。

別のアニメの話に移ると、2011年にアニメ化された「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」のラストシーンとなった埼玉県秩父市の龍勢祭に前年よりも約3万人多い11万人が来ることとなった。このように実際にアニメの聖地巡礼というものによってそのモデルとなった地域に強大な経済効果をもたらすことは有り得ることなのである。

聖地1

滋賀県犬上郡豊郷町豊郷小学校旧校舎

しかし、このような動きがあることを知って「じゃあ、うちの地域でもやろう」としてあまりに露骨にアニメを全面に出しすぎては、アニメファン以外は来ないでしょうし、オタクたちは自分たちがネタとして扱われていると思ってしまって来なくなってしまうこともあるでしょう。まして今やTwitterやfacebookなどによって自分の意見を誰でも述べることが出来ます。最初はたった一人の意見だったかもしれませんが、その意見を目にした人が多くて、それに触発される人が出てきたらその意見はあっという間にネット上で広がってしまいます。またオタクを金づるとしか見てないのが伝われば当然のことでしょう。さり気ないさがあるものを求めているオタクは多いでしょう。オタクが世間に認知されある程度の市民権を得た現在ではあまり自分がオタクであることを曝け出してもいいと考える若い人はいるでしょうが、基本的に昔からいるオタクは曝け出したくない、目立ちたくないと考えているのではないでしょうか。露骨なアピールをしては若い人は来るかもしれませんが、大人はあまり来ないのではないでしょうか。若い人よりも大人の方がお金を持っているのはほぼ確実でしょう。そのようなことが起こり得るということを考えずに、安易にアニメとのコラボなどをすることはとても危険ではないでしょうか。

そういった点で考えると自治体が何かアクションを起こすわけではなく、SNSでファンが噂を拡散して聖地となった場所がファンに好意的に受け止められるのは当然である。そこにはオタクをダシにして金儲けをしようという思惑がないのだから。その一例として「けいおん!」というアニメでは、主人公たちが通う学校のモデルが滋賀県犬上郡豊郷町豊郷小学校旧校舎ではないかとファンの間で盛り上がりを見せ、巡礼者が殺到した。

ここまで書いてきてアニメの聖地巡礼で地域を活性化させることはかなり難しいことがわかるだろう。実際に今までいくつもの自治体がアニメの聖地をダシにして盛り上げようとしてきたが、その成功例は数少ない。さらに成功してもその聖地に元々住んでいた人たちと巡礼をしに来たファンたちの間で何かトラブルがおきてしまうこともあるのだ。

もしアニメの聖地などでファンなどの人を呼び込みたいというのならもっとオタクという人たちについて学ぶべきである。ただのアニメが好きな人たちではなく、もっと詳しく知ることでオタクたちが真に求めているものなどが見えてくるだろう。もちろん、オタクにも色々なタイプの人がいるだろうが、それをろくに調べもせずに行うよりも、何倍も効果があるだろう。