コラム

気候変動時代における食文化と産業の変容:パーソナルストーリーから見る未来への展望(2/3)

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第二部:日本における特産品分布の変容

日本の農業における構造的変化

農林水産省の調査によると、日本の年間平均気温は過去100年で約1.28℃上昇している。この変化は、作物の栽培適地を大きく変化させている。北海道農業研究センターの調査では、米の栽培適地が北上を続けており、これまで栽培が困難とされていた地域でも良質な米の生産が可能になりつつある。

特に顕著な変化が見られるのが果樹栽培だ。農研機構果樹研究所の報告によれば、リンゴの着色不良や日焼け果の発生が増加している。青森県のリンゴ農家では、これまでの栽培技術の見直しを迫られており、新たな品種への転換や、栽培方法の改良が進められている。

水産業の変容

水産研究・教育機構の調査によると、日本近海の水温上昇により、漁場や漁獲対象魚種に大きな変化が生じている。特に、サンマやサケの漁獲量減少は深刻だ。一方で、ブリやカタクチイワシの漁獲量は増加傾向にある。

この変化は、水産加工業にも影響を与えている。銚子市の水産加工業者は、従来のサンマやサバを中心とした加工品から、ブリやイワシを使用した新商品の開発に注力している。また、養殖業でも変化が見られ、宮城県では、これまで南方で行われていたハマチの養殖が可能になりつつある。

新たな特産品の誕生と産地の移動

日本の伝統的な特産品は、気候変動により大きな転換期を迎えている。その一方で、新たな特産品が生まれつつあることも注目に値する。高知県農業技術センターの研究では、温暖化により、これまで栽培が困難だった亜熱帯性果樹の栽培が可能になってきている。特にパッションフルーツは、2015年以降、栽培面積が着実に増加しており、新たな地域特産品として確立されつつある。

和歌山県では、温州みかんから、より高温に適応した中晩柑類への転換が進んでいる。県農業試験場では、気候変動に適応した新品種の開発を進めており、従来よりも糖度の高い品種の商品化に成功している。

北海道における農業革新

北海道立総合研究機構の調査によると、道内の年平均気温上昇により、これまで栽培が困難だった作物の栽培が可能になってきている。特に注目すべきは、ワイン用ブドウの栽培適地の拡大だ。空知地域では、ピノ・ノワールやシャルドネといった欧州系品種の栽培が可能になり、高品質なワインの生産が実現している。

また、道南地域では、リンゴの栽培面積が増加している。従来、リンゴ栽培は津軽地方が中心だったが、気温上昇により、北海道でも商業的な栽培が可能になってきている。特に、病害虫の発生が比較的少ない環境を活かした、減農薬栽培への取り組みも始まっている。

※本記事は、過去にnoteに執筆した記事を再掲しています。

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