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GW最終日に万博行ってきたよ。

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フランス館における文化と技術の融合:多視点的考察

フランス館は「愛の讃歌」をテーマに掲げ、単なる国家紹介の場を超えた文化的体験空間として機能しています。劇場のカーテンを思わせる外観と螺旋状の導線、そして芸術作品と最新技術が融合した内部空間は、訪問者に多層的な体験を提供しています。

建築家の視点から

フランス館の建築的特徴は、「劇場性」と「持続可能性」の両立にあります。フランス建築事務所コルデフィとイタリアのデザイン事務所CRAの協働により生まれたこの空間は、パビリオン自体が一つの物語を語るように設計されています。ピンクゴールドの螺旋階段を上りながら展開されるストーリーテリングは、建築空間がコミュニケーション媒体になり得ることを示しています。また、屋上緑化や環境負荷を低減する建材を使用するなど、美的価値と環境配慮を両立させている点も注目に値します。

マーケティング専門家の視点から

ブランディングの観点では、フランス館はLVMHグループを中心とした「フランスの卓越性」を体現する場として機能しています。ルイ・ヴィトン、ディオール、セリーヌといった象徴的なメゾンによる没入型の展示は、国家ブランディングと企業ブランディングを見事に融合させた好例です。特に、伝統工芸と革新技術を組み合わせた展示手法は、「伝統を持ちながらも常に革新を続けるフランス」というメッセージを効果的に伝えています。

文化人類学者の視点から

フランスと日本の文化的交流という観点からは、1970年の大阪万博へのオマージュを含む空間設計が興味深い試みです。レセプション空間のデザインやビストロ「Le Bistrot」に置かれた特別デザインの家具などに、日仏文化の相互尊重が表現されています。これは単なる異文化間の表面的な融合ではなく、歴史的な関係性を踏まえた深い文化的対話を意図していると読み取れます。

厳島神社とモンサンミッシェルが同じ「水」をキーワードに繋がっている

来場者体験デザイナーの視点から

フランス館の最大の強みは「五感を通じた体験」を重視している点です。美術品の視覚的鑑賞だけでなく、ビストロでのフランス料理体験、香りや音による空間演出など、あらゆる感覚に訴えかける設計は、現代の体験経済の潮流を反映しています。

夜空に輝く幻想的なパビリオン、最新テクノロジーが融合した展示、世界各国の文化が交差する空間—。開幕した大阪・関西万博の会場を訪れ、そこに広がる未来社会の実験場を目の当たりにしました。

お得情報:GW最終日の大雨でも待ち時間わずか10-20分! 私が訪問したのはゴールデンウィーク最終日の雨の日でしたが、この天候が幸いし、通常なら長蛇の列ができるパビリオンもほとんど10〜20分程度の待ち時間で入場できました。万博を効率的に回りたい方には、雨の日こそ狙い目です!傘や雨具の準備は必須ですが、大屋根リングがあるため、会場内の移動も比較的快適に行えました。

この記事では、イベント学会京都府チームプロデューサーとしての立場から、マーケティング視点で大阪・関西万博の魅力と可能性について考察します。

「未来社会の実験場」が生み出す体験価値

大阪・関西万博のコンセプト「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」は、単なるスローガンではありません。会場全体がまさに生きた実験場として機能しています。

拝見した会場では、来場者がパッシブな観客ではなく「共創者」として位置づけられています。各パビリオンでは、最先端技術を自ら体験し、フィードバックを残すことで未来社会の形成に参加できるシステムが導入されています。これは従来の「見せる万博」から「体験する万博」へのパラダイムシフトを象徴しています。

マーケティング的視点から見ると、これは「製品中心」から「体験中心」へと移行する現代消費者行動の反映でもあります。万博という場を通じて、企業や国々は自国の技術やビジョンを単に展示するのではなく、それらを「体験価値」として提供し、来場者との対話を通じて洗練させていく機会を得ています。

多様性とインクルージョンを象徴する「大屋根リング」

会場の中心を占める円環状の「大屋根リング」は、単なる建築物を超えた象徴的存在です。全周約2,025m、建築面積約61,000㎡というスケールを持つこの構造物は、「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を具現化しています。3月には「世界最大の木造建築物」としてギネス世界記録にも認定されました。端っこがあんなに遠いの?と屋根に登ると圧倒されます。

夜も綺麗

エスカレーターでもエレベーターでも上がれます

大屋根リングの建築的特徴は、日本の伝統的な「貫(ぬき)接合」に現代工法を組み合わせた点にあります。この技術的な側面は、「伝統と革新の融合」という日本的な価値観の表現であると同時に、サステナブルな未来に向けた建築のあり方を示しています。

マーケティング的視点からは、この空間構成は「差異化と標準化のバランス」という現代のブランディング戦略に通じるものがあります。各国のパビリオンが独自性を保ちながらも大屋根リングという共通の「プラットフォーム」に包含されることで、多様性を尊重しつつ一体感を生み出す絶妙なバランスが実現しています。来場者は各パビリオンの個性を体験しながらも、常に「ひとつの万博」という文脈を感じられる空間になっています。

さらに、「人の動線としての機能」と「滞留空間としての価値」を両立させている点も注目に値します。現代のマーケティングでは「顧客体験の設計」が重視されますが、大屋根リングはまさに来場者の体験価値を高めるように設計されています。上部のスカイウォークからは会場全体や大阪湾の景観を一望でき、来場者に特別な視点を提供する仕掛けも秀逸です。
さらに、各国パビリオンは大屋根リングの中に入っており、まさに大屋根リングを一周すると「世界一周」となるように設計されているようです。
各国パビリオンの国名表記は大屋根リングに向いている理由もここにあるようですね。

京都府チームプロデューサーとしての視点:地域間連携の可能性

イベント学会京都府チームのプロデューサーとして大阪・関西万博に関わる中で、特に注目しているのが「地域間連携」の可能性です。

万博は「大阪」の催しではなく、「関西」そして「日本」の催しとして位置づけられています。京都府も「創」として独自の魅力を発信しつつ、関西全体としての観光・文化資源の相互補完的な活用を推進しています。

この関西広域での連携は、「都市間競争から都市間協力へ」というマーケティングパラダイムの転換を象徴しています。それぞれの地域が固有の魅力を保ちながらも、来訪者に対して「関西」という広域圏での体験価値を提案するアプローチは、観光DMOの今後の方向性を示唆しています。

テーマウィークという革新的な枠組み

万博ではテーマウィークという興味深い取り組みが実施されています。約1週間ごとに異なる地球的課題をテーマに設定し、参加各国が協力して解決策を模索するこの枠組みは、単なる展示を超えた「課題解決型プラットフォーム」としての万博の可能性を示しています。

関西歴史文化首都パワー

このアプローチは、現代マーケティングにおける「パーパス・ドリブン」の潮流と共鳴します。製品やサービスの機能的価値だけでなく、社会的課題への貢献を通じて生み出される価値が重視される時代において、万博はその先進的モデルを提示していると言えるでしょう。

未来のマーケティングへの示唆

最後に、大阪・関西万博から読み取れる未来のマーケティングへの示唆について考察します。

  1. リアルとバーチャルの融合:万博では「バーチャル万博」も同時開催され、物理的な訪問が難しい人々にも体験機会を提供しています。これは、今後のマーケティングがリアルとバーチャルの境界を越えて、シームレスな体験を提供していく方向性を示唆しています。
  2. 共創のプラットフォーム化:「TEAM EXPO」プログラムに代表される参加型の枠組みは、企業と消費者の関係が「提供者と受容者」から「共創パートナー」へと進化していく可能性を示しています。
  3. 持続可能性の中心化:SDGsの具現化を強く意識した万博の姿勢は、サステナビリティが付加的要素ではなく、マーケティング戦略の中核に位置づけられるべきことを改めて示しています。

おわりに

大阪・関西万博は、単なる展示会を超えた「社会実験の場」として機能しています。その中で示されるビジョンやアプローチは、未来のマーケティングのあり方に多くの示唆を与えています。

イベント学会京都府チームプロデューサーとしての経験を通じて、万博が提示する「いのち輝く未来社会のデザイン」という挑戦に、微力ながら貢献できることを光栄に思います。

残り期間中、多くの人々がこの「未来社会の実験場」を訪れ、明日への可能性を感じていただけることを願っています。

※本記事は個人的見解に基づくものであり、所属組織の公式見解を代表するものではありません。

→ 作戦本部株式会社へのお問い合わせはこちらから(https://www.sakusenhonbu.com/#front-contact

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