コラム

中国市場で伸びる商標マーケット

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商標ビジネスは近年日本で話題となった。ベストライセンス社の上田育弘氏がPPAPなど、ベストライセンス者と無関係の商標を大量に取得しようとした問題だ。上田氏は商標を先に取得することで商標の権利を本来の使用者に売り利益を上げることが目的だったとメディアに向けて述べた。実はこれに似た事例が中国でも多発している。

中国では商標を販売し利益を得ること以外に、商標を使ってそのブランドになりすましビジネスを行うということも起こっている。〇〇有限公司などという商標を勝手に取得し、あたかも日本の〇〇という会社の関連会社のように装って営業するのだ。

実際に中国で商標を勝手に取得された例としては、クレヨンしんちゃん、ドラえもん、NHK、初音ミク、福原愛、ちびまる子ちゃんなどがある。クレヨンしんちゃんが2004年に中国のアパレルメーカーと組み、キャラクター入りセーターを販売しようとしたところ、商標に引っ掛かり、裁判となった。最終的には2012年3月にクレヨンしんちゃんを発行する出版社の著作権が認められ、中国企業が商標権を主張することはできないという判決が下ったが、ここにいたるまでかなり苦戦を強いられたようだ。その理由が商標の先願主義にある。先に商標を取得した方に権利が与えられるというものだ。日本では先願主義のほかに先使用権といって、他人によって商標が出願されるよりも前からその商品名や会社名、ロゴなどを使用しており、ある程度有名であると裁判所により判断されると商標権を持っていなくてもその商標を使用し続けられるという制度がある。しかし中国では当時先使用権が一般的でなかったためにこのような事態が起こってしまったようだ。

中国といえばSONYではなくSQNY、HITACHIではなくHITACCHIなどとうまく商標をかわして商売する様子がよく報道されるが、近年ではここまで述べたような先取りビジネスも増えている。この対策として最も有効なのは、商品やサービスを発表する際に、海外進出の見込みが少しでもあるのなら先に海外でも商標を取得してしまうことだ。商標登録の手数料こそ取られるものの、先に商標を取得されたがためにブランドを捨てて別の名称で海外進出する羽目になる可能性を考えると登録しておくに越したことはないだろう。

参考

商標登録ホットライン 先願主義と先使用権について(http://106hotline.jp/knowledge/FTFprinciple-PriorUse.html)

NHK 週刊ニュース 深読み『えっ!クレヨンしんちゃんが… 商標は誰のもの?』(http://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2012/120428.html)

Business Journal 中国、日本ブランドを勝手に商標登録、日本企業の被害深刻化〜ネット上に蔓延する模倣品(http://biz-journal.jp/2013/08/post_2806.html)

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